建築リノベーションとしての柳町
- 01 建築資源活用の柳町においてのポイント
- 02 建物 改修前、改修後。リノベーションってなんだ?
- 03 OpenAの柳町に対する考え方 / 馬場正尊
- 04 OpenA 鈴木みのりによる建築的な森永家・久富家
- 05 佐賀市役所の仕掛け / 都市デザイン課 武藤英海
- 06 古賀銀行 / 音楽イベント、カフェとしての文化財活用
建築資源活用の柳町においてのポイント
リノベーションは建築前から戦いが始まっている。
計画段階から段取りではなく、必ず命を吹き込むのだ!
この旧森永家、旧久富家のリノベーションの案件に関しては、何点かのポイントがあると思います。仕掛けた側は佐賀市、そして東京R不動産なども手がける、建築設計事務所と呼ぶには一風変わった活動をしている馬場正尊さん率いるOpenA。戦いは数年前から始まっています。ポイントの1つ目はまだ建物がリノベーションされる前、ぼろぼろの状態の昔の建物で入居者募集説明会を行い、鍋島報效会・徴古館の富田紘次主任学芸員を呼びながら、建物や柳町の歴史なども丁寧に入居者に説明し、しっかりと周知を図っていたことです。この長崎街道上に位置する柳町という土地の歴史をしっかり認識した上で、どういう人達が入ってくれるのか?どういう人達に入って欲しいか?想定をしながら事業を進めていったのです。そして、2つ目のポイントは募集のやり方にあります。建築前の写真を見てもらうとよーくわかるのですが、かなりボロボロだったり「普通の住宅じゃん!」と感じると思います。その状態で見せても自分達が入居した時のイメージはなかなか掴めないのではないかな?と僕は思いました。しかし、今入居している人々は、インタビューをしていくとあまりそういうことは気にしていないようでした。「それはそれ、上手くいくだろう!」という一見僕から見ると少し楽観的すぎるんじゃないかと思うくらいでした(笑)。「広く募集して誰でも入っていいですよ!」というスタンスではあるのですが、しっかり審査をします。その方法論もユニークで、事業者に事業計画書と10分間のプレゼンをしてもらう。そして、家賃設定も何故か事業者にしてもらうという摩訶不思議な方法をとっているのでした。そこが自発性を持った人か?というところを見極めるポイントかと。そして3つ目は、入居者が決まった段階でその人達に合わせて設計をやり直したことです。僕はこの3つのポイントに集約されるんじゃないかと思います。この章では、市役所の武藤英海さん、OpenAの馬場正尊さんへのインタビュー、そして文化財活用という視点で旧古賀銀行、そして旧古賀家について触れようと思います。